しごと日記Q&A編

  「順路帳」手書きの話、大変そうですが面白いです。他にも教えて下さい。
(2018年7月号掲載)

  7月に入り、これからが梅雨本番。晴れの日も長続きせず、当ASAのスタッフたちもいささか疲れ気味です。早く梅雨が明けてくれればいいのですが、今度は暑い夏がやってくるわけで、しばらくは体力勝負の日々が続きます。
  新人君たちも踏ん張りどころです。ベテランスタッフの中には「雨と配達と私……」なんて1990年代のヒット曲の替え歌を歌っているものもいますが、若い新人君たちには聞き覚えのない曲のようで、ポカンとした顔をしています。

 前回は、配達に不慣れな新人君たちの配達マニュアルでもある「順路帳」の話で、手書きの順路帳では、読者氏名の漢字の書き間違いが多いということを紹介しました。しかし、店長のにらんだところでは、どうも新人君たちは書き間違いだけではなく、読み方を間違っていることも多いようです。
  配達出発前に、新人君たちが先輩スタッフと配達休止読者の連絡引継ぎをやっている場面で聞き耳を立ててみると、自分が読めない苗字の読者氏名を何となく雰囲気で読んでいることが分かります。「ホニャララ山さん」とか「むにゃむにゃ川さん」みたいに曖昧にごまかしながらも何とか漢字を読もうと努力する新人君もいれば、「何とかサン」とか「あそこの角曲がった一軒目の家」なんて最初から苗字の読み方の予想をあきらめてしまっている新人君もいます。難読な上にめったに見かけない珍しい苗字だと、ベテランの先輩スタッフが何回教えてもなかなか覚えられない場合もあります。

  順路帳の文字の書き間違いは読者の皆さんの目に触れることはありませんが、読み方はそうはいきません。集金で訪問して世間話をするうちに、「そういえば○○さんも……」なんてお客様のお名前を出したところ、「やあね、うちは○○じゃなくて△△って読むのよ」なんて指摘され、冷や汗をかいてしまうこともあります。
  ちなみに、人気漫画『釣りバカ日誌』の記念すべき第一話は、上司に「ハマザキ」と呼びつけられた主人公が、「故郷九州ではハマザキではなくハマサキです」と抗議する場面から始まります。九州出身のスタッフに訊ねてみると、「ヤマサキ」や「ナカシマ」のように濁らずに読む名字も多いようです。
  また、名字以外にも渋谷、世田谷など地名でも多く用いられる「谷」の文字。「タニ」と「ヤ・ヤツ」の読みがありますが、後者の「ヤ・ヤツ」は、東国と呼ばれていた時代からの関東地方特有の用法のようです。
  「三谷」「渋谷」など、タニでもヤでも読める名字を前にすると、慣れない新人君は、先輩スタッフの顔色を窺いながら、自信なさげに「ミツヤ?」と声に出すのです。先輩スタッフたちは、読み間違えると失礼になるからと、お客様の前では初めから名前を呼ばずに「お客さん」とか「奥さん」と呼ぶようにしているようです。

  さて、7月1日は神宮球場にて第100回全国高等学校野球選手権大会東・西東京大会の開会式が行われます。高校球児たちの『汗』が輝く季節です。

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