小さな散歩道

豊田地蔵尊(日野市豊田4-36-34)

 
(左) 豊田地蔵尊 右手前に写っているのは身代わり地蔵 (右) 祠の中に立つお地蔵様

 再開発の進む豊田駅の南口を出ると、すぐ左手には豊田地蔵尊が建っている。この地蔵尊は、豊田地区の戦没者の慰霊と平和を願って戦後に建てられたものだという。地蔵尊の入口脇には休憩用のベンチがあり、テント屋根が張られている。以前訪れた時にはこのテントは見かけなかったので、近年になって張られたのだろう。
  左手には由緒書きと戦没者名碑があり、右手には身代わり地蔵が建っている。身代わり地蔵とは、人々に訪れる苦難を「身代わり」となって引き受けてくれるというお地蔵様とのこと。なんともありがたいお地蔵様のようだ。


お地蔵様の周りには花がいっぱい

開発が進む豊田駅南口

  正面には小さな祠があり、両脇には「豊田地蔵尊」と書かれた提灯が掲げられている。祠の中をのぞいてみると、紫色の服をまとったお地蔵様が安置されていた。 それほど大きなお地蔵様ではないが、よく見るとすっきりとした表情をした、きれいなお顔のお地蔵様だ。
  祠の中はよく手入れされていて、お地蔵様の周りは色鮮やかな花々で彩られ、お線香も用意されていた。 地蔵尊全体もよく整備されていて、地域の人々から大変慕われている様子がうかがわれた。

  豊田地蔵尊は駅前商店街の入口に位置しているが、この周辺では駅前再開発が進んでおり、地蔵尊の目の前では近代的な高層マンションが建設中であった。古くからある小さな地蔵尊と、道一本を隔てた高層マンションとの間には、大きなギャップを感じさせられる。
  この一帯は整備された駅前ロータリー周辺に新しいマンションが立ち並ぶなど、数年前とはだいぶ印象の異なる街並みになっているようだ。
  地蔵尊から続く昔ながらの商店街も、かつては道の両側に店が並んでいたような記憶があるが、再開発によって現在は片側のみになっており、空きスペースとなっている場所も目についた。このレトロな街並みも次第に消えていってしまうのだろうかと思うと、ちょっと残念な気持ちになった。

 商店街から地蔵尊に戻ると、提灯に灯りがついていた。夕暮れ時、駅からは多くの人が降りてくる。無事の帰りを待つように構えられた地蔵尊には、帰宅前にお地蔵様に手を合わせる人たちの姿が見かけられた。

(2022年12月掲載)  地図


小さな散歩道 目次へ 前へ  次へ