小さな散歩道

仲田の森蚕糸公園(日野市日野本町6-1-88)


仲田の森蚕糸公園入口

湧き出している地下水

深い森の中にはテーブルもある

国の登録有形文化財の第一蚕室(桑ハウス)

 日野駅から甲州街道を東へ進み、日野図書館の角を左に入る。本堂前に立派な松が伸びる普門寺を過ぎ、住宅地を進んで大通りを渡ると仲田の森蚕糸公園に着いた。

  かつて、この辺り一帯には「旧農林省蚕糸試験場日野桑園」があり、桑の苗木育成と品種改良に関する研究や蚕の優良品種の育成と普及のための研究が行われていた。蚕糸試験場日野桑園は、日本の蚕糸科学技術研究をリードする機関だったが、産業構造が劇的に変化した高度経済成長期を経て、1980(昭和55)年に現在の茨城県つくば市に移転。その広大な跡地を整備してできたのが、この仲田の森蚕糸公園や隣接する市民の森スポーツ公園だ。この地の歴史を語り継ぐような公園であり、西側の入口近くには移転前の日野桑園の写真が展示されていた。

  園内に入ると小さな橋の下に水路が流れていて、その傍らでは水がブクブクと湧き出していた。これはポンプで汲み上げている地下水なのだそうで、ヒンヤリとした感触がなかなか心地よい。散策路を進むと、右手には多くの桑が植樹されており、左手に伸びるケヤキには「第四蚕室・跡地」と書かれたボードが巻かれていた。これは、日野桑園にもともと植栽されていた樹木なのだとか。


園内を流れる小川

 散策路から少し外れると、公園の内部は高い緑に覆われていた。辺り一帯が木陰になっていて、吹き込む風も涼やかに感じられる。この一角には木製のテーブルとベンチも置かれていた。また、園内の北西からも水路が伸びていて、親水広場のようになっているスポットもあった。こちらでは小さな子どもが虫捕り網を片手に水面を凝視していた。

 水路の先には、1932(昭和7)年に竣工した第一蚕室(通称・桑ハウス)が残されている。この建物は国の登録有形文化財に登録されており、現在は建設当初に近い姿に復元されているという。復元されたということもあり、目の前の蚕室は昭和初期に建てられたとは思えないほど真新しく感じられるが、建設当初はこのような姿だったのだろう。

  第一蚕室の向かいには、日野桑園の庁舎の基礎部分が残されている。古びた基礎の内部からは、桑園の歴史を物語るように木々が縦横無尽に伸びていた。

(2022年10月掲載)  地図


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