続・しごと日記 〜新人君は見た!〜

[12] 引越しシーズン  (2007年3月号掲載)

 だいぶ春らしくなってきました。読者の皆様、いかがお過ごしでしょうか?
  今回も我らが新人君の日記をのぞいてみましょう。

○月×日

 いよいよ3月だ。
  先輩が言うには「転出入の多い3月は、一年で一番の繁忙期」なのだそうだ。 12月には「今月が一番忙しい月だ」と言われ、先月は「寒くて一番つらい月だ」と言われ、 新聞屋さんって、なんて「一年で一番○○な月」が多い仕事なんだろう。

 店長が言うには、新聞販売店の仕事って、世帯数の動向がそのまま配達部数に影響するんだそうだ。 世帯数が増加すると部数が増え、減少すれば部数が減るってことらしい。
  3月・4月は、進学、就職、転勤なんかで、引越しの多いシーズンだ。1年間の引越し件数の 実に3割以上がこの2ケ月間に集中するんだそうだ。この時期に、どれだけ新規のお客様を増やすことが 出来るかで、その年の販売店の命運が決まるらしく、それが「繁忙期」と言われる所以らしい。

 3月に入り、まず学生の転出が始まる。1人暮らしをしていた学生が卒業や就職で住んでいた アパートを引き払って転出していく。アパートによっては人の気配がまったく無くなってしまうことも あって、「取り壊されるのかな?」と思ってしまうくらいの勢いで空室が増えていく。
  学生の転出がひと段落すると、今度は家族連れの転出入が続く。これは、お子さんの卒業や 進学に合わせて3月中旬から下旬にピークを迎える。
  最後に、入学に合わせて学生の転入が増えてきて……と、先輩が「転出入」について熱く語っている。

 先輩の話をあくびしながら聞いていると、「引越しするから購読料の精算に来てほしい」と お客様からの電話だ。その他、転居先の新居への配達開始手配を依頼される電話も数多くいただく。
  ただ、最近は若い人を中心に、引っ越しの連絡をいただけない方や結構遅い時間に引越しされる 方も増えてきた。そうすると、ぼくらもなかなか引越しされたことに気が付かない。 新聞をポストに入れようとしたら、空き家になっていた……なんてこともあった。
  また、購読料の精算もしないまま引越しされてしまうこともある。とは言っても、故意ではなく、 引越しのバタバタでうっかりしていた……というのがほとんどだ。先輩が新人の頃に、連絡も無く 引越しをされたお客様がいて、配達の合間に転居先の相模原まで集金に伺ったこともあるそうだ。

 引越し時の精算は、親しくしていただいていたお客様とのお別れを意味する。遠方への引越しだと、 またお会いすることなんて無いかもしれない。
  でも、必ず口をついて出てくる言葉がある。
  「また機会がありましたら、よろしくお願いします」
  知らない人が聞けば、営業用のあいさつだなって思うかもしれない。でも、そうじゃなくて、 自然と言葉が出てくる。そのお客様は、覚えていないだろうけど、「毎日配達ご苦労様」なんて 暖かい言葉が胸にしみて、やっぱりお別れは寂しいもんだ。

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[13] 引越しシーズン その2  (2007年4月号掲載)

         いよいよ4月です。入学、就職など新生活への期待と不安に満ちあふれた季節の到来です。
 我らが新人君も、毎日の仕事に追われながらも、皆様の「新生活」を朝日新聞とともに送っていただくべく、日々奮闘中です。前回に続き、そんな「新人君の日記・引っ越しシーズン編」をのぞいてみましょう。

○月×日

 春は別れと出会いの季節だ。それだけお客様も入れ替わるということだ。
  ご入居されたお宅に「朝日新聞です」とあいさつに伺う。好感を持ってもらうために、自分でも気持ちの悪いくらいの笑顔を振りまく。ただ、最近はワンルームアパートの入居者(学生や単身者)は、新聞を読まない人が多くなってきているそうだ。
 「ぼくだって読んでいるのに……」というつぶやきを聞いた先輩が一言、「おまえにとって新聞は商品なんだから中身を知るためにも読んで当たり前だ!」と怒られてしまった。
まあ、ごもっとも……。とはいえ、自分の力で新しいお客様を増やしていくことは結構な快感だ。

 仕事の後、店長に呼ばれた。
 「がんばったな、入社してちょうど1年だ」そう言いながら、カレンダーを指す店長。
 そうか、忘れていたけど入社してからちょうど1年だ。「とりあえず1年は」そう思って上京した。この仕事の面白さがなんとなくわかってきた。 これからもがんばっていこう。そう決めた。

 1年間で一通りの仕事を体験した新人君、いまや「新人君」ではありません。
ちょうど1年前に新人君がそうだったように、当店にも新しい仲間が入社してくるのです。

 次号から「しごと日記・Q&A編」をお送りします。

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