小さな散歩道

清水窪湧水 (大田区北千束1-26)


「東京の名湧水57選」の看板と説明板

清水窪湧水 滝は人工だが、水は自然湧水

道の反対側にある妙徳稲荷大善神


(左) 清水窪湧水の入口。階段を降りた先に鳥居が見える  

 「東京の名湧水57選」に選定され、大田区文化財にも指定されている「清水窪湧水」は、東急大井町線・東急目黒線の大岡山駅から10分のところにある。
  駅を出て地元の買い物客で賑わう大岡山北口商店街を直進。駅前にある東京工業大学の学生さんか、地域商店街にしては珍しく若い人たちの姿も多く見かけた。歩行者天国のような車両通行止区域(15時〜18時)の終点で十字路を右折すると、そこからは賑やかな商店街から一転、閑静な住宅街になる。1ブロックほど行くと、かすかに水の流れる音が聞こえてきた。

  左手に緑が生い茂る一角が見えてくる。そこが清水窪湧水だ。この湧水は武蔵野台地の端、千束の谷が尽きるところにあり、ここから湧き出る水は洗足池の源流となる。かつて千束の谷が田畑だった頃、用水として農作業に使われていたそうだ。
  通りから下る階段の入口に「清水窪辨財天」の表示があり、その先が神社の境内に繋がっている。昔はうっそうとした杉の森で昼間でも陽が射さなかったとか。今は、陽が射さないほどではないが周囲とは隔絶した、静かな都会のオアシスのような雰囲気だ。池の前に藤棚があり、開花シーズンには緑の中で藤の花見が楽しめそうだ。

  湧水によって作られた池の長さは約20メートル。鯉が泳ぎ、赤い欄干の小さな橋が架かる。池の小島には祠が建てられ弁財天が祀られている。江戸時代初期の頃、この地の所有者の岸田家の祖先が祀ったものだそうだ。現在は神格が昇って、天八大龍王神として祀られている。


(右) 池の周りには小さな祠がいくつも並んでいる

  池の周囲には小さな祠がいくつも並んでいる。出雲の国に本社があり、縁結びの神様としても有名な天大圀主之命(あめおおくにぬしのみこと)、交通安全の守護神であり、肩・足・腰の痛みなどにご利益があるとされる馬頭観世音、事業の新規開拓や航空関係の安全にご利益のある天五色大天空神、天徳・地徳・人徳が備わり指導者として力を発揮できるようになる三徳大明神、埼玉県奥秩父に祀られている三峯神社・宝登(ほと)大神・御嶽大神を祀る三社大口真大神(さんしゃおおぐちしんおおがみ)、五つの道を成就させる雨虚空蔵五社稲荷大神(あめこくぞうじしゃいなりおおがみ)が隣り合っている。
  一つ一つの神様に意味があり、祠の横に詳しい説明板が立てられている。これだけ神様が祀られている場所は、知る人ぞ知るパワースポットかもしれない。境内の端には清水窪延命水子地蔵尊もあった。

  道を挟んで反対側には、可愛らしい小さなお稲荷さん、妙徳稲荷大善神の社もあった。

(2018年5月掲載)  地図


小さな散歩道 目次へ 前へ  次へ